明日の農業を拓くチャレンジスピリッツ。スペシャルコンテンツ

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SPECIAL CONTENTS 3 育種×海外営業クロストーク

世界を相手に闘い続ける―。種苗ビジネスの果てなき地平線。

PROFILE
石津 祐志 Yushi Ishizu
[育種] 研究農場 次長 / 1979年入社

約30年、果菜類の育種一筋。1995年から7年間、アメリカに赴任、アメリカン・タキイINC.ユマ農場設立に携わる。メロン、キュウリなどのメインブリーダーを経て、現在、研究農場次長として果菜類全体をマネジメント。仕事で最も感動したことは、ロサンゼルスで自分が開発したハラペノ(トウガラシ)の見渡す限り広大な畑を見たこと。2010年タキイが発表した苦みの少ない「こどもピーマン」の開発にも携わる。

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PROFILE
中森 啓之 Keiji Nakamori
[海外営業] 海外営業部 第一課 / 1996年入社

入社2年目でタキイヨーロッパB.V.(オランダ)へ出向し、欧州各国への営業活動に3年間尽力。2000年に帰国しアメリカン・タキイINC.とタキイ・ヨーロッパB.V.のサポート及び、アフリカ担当。2003年にはタキイ・ド・ブラジルLTDA.に副社長として赴任し、現地法人のマネジメントを行う。2008年より本社に戻り、北米・ヨーロッパ・南米担当として、精力的に営業活動を展開中。

実に奥深い、キャベツのこまやかな品種展開

─タキイの海外展開は現在どのような状況ですか?

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タキイが海外向けの育種に本腰を入れてからは、まだ10年程です。海外向けの育種の難しさは、栽培環境も現地の嗜好も日本とまったく違うところです。たとえば、日本でトップシェアの「桃太郎トマト」を売ろうとしても、アメリカやヨーロッパでは味よりも日持ちが重視されるので簡単には売れません。考え方がまったく異なりますね。

タキイ品種の中で、現在海外で最も売れているのはタマネギ、キャベツなどの葉根菜類です。しかし、果菜類はその市場に対してシェアが低く、今後まだまだ伸ばせる余地があります。

根菜類・葉菜類は日本用に育種したものを、そのまま海外で販売することもそう難しくありません。しかし、果菜類は各国ごとにニーズが大きく違うため、一から新しい品種の開発が必要です。

─海外ではどのように情報収集していますか?

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ブリーダーが必要な品種開発に関する情報は、私たち海外営業が収集します。日本国内ではブリーダーが直接産地へ出向くことができますが、海外では時間やコストの点からも、私たち営業担当者がブリーダーの目となり、耳となって動くことが求められます。

ブリーダーが市場としてのポテンシャルが未知数の土地まで行くことはリスクが大きい。新規開拓となる地域では、海外営業からの情報が育種の大きなカギを握っていると言えますね。

─今後のタキイの有望エリアは?

今、タキイが強いのはアジアですが、私が担当している中南米などはまだまだ開拓の余地がある地域。現在、メキシコに攻勢をかけているところです。

やはりアジアではタキイのブランドが浸透していますが、一方アメリカなどでは、まだまだ認知されていない。野菜では世界の種苗会社トップ5に入るタキイですが、約4,000億円といわれる世界の野菜種子マーケットでシェアを伸ばす余地はまだまだあります。

世界にはまだまだ手付かずの市場がたくさんある。チャレンジのしがいがあります。

攻めるべきは成熟した市場より、これから成長する市場。品種のF1化が進んでいない地域、圧倒的に強い品種が存在しない品目を攻めるべきです。メキシコやアジアの市場もF1品種がこれから本格的に浸透しつつあるところです。今が攻めどきですね。

─海外の仕事で大変なことは?

国内と比べると、海外のスタッフはまだまだ少ないと感じています。改善策や問題点に気づいても、まだまだ対応できていないと感じることが多いです。

スタッフが少ないと一人ひとりの責任が大きい。それだけ重要な仕事を任されていると言えます。海外向けに長い年月をかけて開発した品種を、最終的に販売するかどうかを決定するのは、実は海外営業なんです。現地を知り尽くした目で判断することが大事ですから。もちろん「売る」と決めたからには責任をもって売ってもらいますよ(笑)。
売るだけではなく、品種の善し悪しも含めた総合的な判断までできる能力が海外営業には求められます。

確かに責任の大きい決断を任されます。品種化の判断には、取引先や現地法人のスタッフと一緒に試作圃場の調査を行い、十分にディスカッションします。ブリーダーにフィードバックするための細かいデータを取りながらも、営業として本当に売れる品種かどうか判断しなければなりませんが、この仕事は海外営業の仕事の面白さの一つだと思います。

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海外ではハプニングも多いですね。アメリカン・タキイINC.のユマ農場に赴任中、現地の生産者から10エーカー(約4ha)の畑を借りてメロンの育種を始めたのですが、周囲はすべてコットン畑。そこヘリコプターから除草剤をまかれてしまい、栽培中のメロンが全部枯れてしまいました。思いっきり文句を言ってやったんですが、枯れたものはどうしようもありません。対応策として播種が1ヵ月遅い、約800km北にあるカリフォルニア州サンホーキンバレーで新しい農地を借りる交渉に。努力の結果、無事に栽培・検定ができ、仕事を遅れることなく進めることができましたが、局面での判断力が求められた貴重な経験でした。

私がタキイ・ド・ブラジルLTDA.のマネジメントを任されたのは30歳の頃でしたが、営業という仕事だけでなく、合弁契約の解消、他の種苗会社との提携、ブラジル農場の開設準備といったプロジェクトに参画する機会があり、本当に良い経験になりました。農場に不可欠な井戸を掘ったときのことですが、なかなか水源にたどり着きませんでした。あと数メートル掘るのに2〜300万円かかると言われ、農場用の土地購入費用や建設費用からすると微々たるものとはいえ、判断に悩んだのを覚えています。

海外では現地スタッフとのコミュニケーションにも気を使います。ユマ農場にはメキシコ人が多いんですが、ふんぞり返った“ボス”ではダメ、反発を買います。時々ホームパーティーなどに招いてコミュニケーションを深めようとするのですが、仲良くなりすぎて“アミーゴ”になってしまっても言うことを聞いてくれない。微妙な関係をうまく保って働いてもらう必要がありました。

オランダ、ブラジルの現地子会社で立場が全く異なりましたが、自分より年上の同僚と仕事をすることが多く、私の場合は“アミーゴ”ばかりだった気がします。なにぶん、慣れない異国の地では、自分ひとりだけでは何もできないので、チームワークが何よりも大切でした。しかしながら、時には日本からの出向社員として、年齢に関係なく、現地スタッフに強く意見する必要性もありました。

終のないブリーディングの課題。

─二人が一緒に取り組んだメロンの開発秘話を聞かせてください。

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ブラジル用のメロンの品種開発をスタートしたのは、私がアメリカン・タキイINC.のユマ農場で育種を、中森君の前任者がタキイ・ド・ブラジルLTDA.を設立して市場開拓をしていた頃です。

当時、ヨーロッパ向け輸出用メロンの大産地となっていたブラジルではライバル社の黄皮メロンが圧倒的シェアを占めていました。タキイもそのシェアを狙っていたところ、ヨーロッパ輸出用メロンには、日持ちのよい品種が求められている情報を掴みました。当時、ブラジルに出張していたブリーダーと、この日持性がスタンダードになると確信。その時点から育種の方向を大きく変更してもらいました。

日本でも黄皮メロンの品種は作っていたので、それをベースに開発しました。具体的には、貯蔵性があり傷みにくいといったタイプが求められていました。

そして、楕円形のメロンがポピュラーでした。

あぁ、あれは困りました。アメリカ・ユマ農場で検定すると楕円形の果実になるのに、ブラジルに種子を送って試作すると、まん丸の果実になってしまって。

ブラジルでの試作結果をフィードバックしては、次の育種に反映してもらいました。試作を繰り返すうちに、ある時を境にブラジルでも市場が求めている楕円形の果実がゴロゴロ実るようになりましたね。

ユマはブラジルに似た環境ですが、やはり現地で栽培してみなければわからないことが多いですね。この一件で南米向け育種のノウハウが蓄積され、今の育種に生かされています。

実はそのメロン、無理を言って2品種開発してもらいました。最初は小さいサイズだけでしたが、しばらくして大きいサイズも需要があることが判明して…。

Raysol(レイソル)とDurasol(デュラソル)。2品種を開発して本当に正解だったと思う。

Raysolはヨーロッパ輸出用の小さいメロン。Durasolはブラジル国内消費用の大きなメロンです。実はヨーロッパの市場が非常に移り気で、昨年は小さいサイズを要望していたのに、今年は大きいタイプを要望するなど一貫性に欠けるところがありました。大きさの違う2品種をもっていれば、生産者にとってもメリットになり、どちらの場合でも対応できますからね。

育種した側としては、両方とも高く評価されて本当にうれしかった。

現地試作の結果では、生産者の評価はもちろん、輸出先であるヨーロッパ市場からも好評でした。品種決定権はヨーロッパ側のバイヤーにありますから、ヨーロッパで売れる保証がないとブラジルの生産者も首を縦に振りません。バイヤーへの売り込みはタキイヨーロッパB.V.にも協力してもらい、タキイのグループ会社が一丸となって取り組んでいます。

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