明日の農業を拓くチャレンジスピリッツ。スペシャルコンテンツ

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SPECIAL CONTENTS 1 国内営業奮闘記

決戦、飛騨高山。ホウレンソウ大産地へ食い込めるか

PROFILE
清野 諭史 Satoshi Seino
中部支店 / 1999年入社

入社13年目、徹底して現場に入り込む営業スタイルが持ち味の34歳。仕事をするうえで最も大切に考えるのは「謙虚さ」。特に、生産農家と接する時には、自社品種の特性を客観的に分析し、長所だけでなく必ず短所も伝えることを心掛ける。「品種の弱点も正直に示し、その解消策を提案することが信頼関係を築いていくことだと考えています」。入社3年目から5年間の札幌支店勤務を経て本社へ帰任、2006年から岐阜・愛知県を担当する。

プロローグ

岐阜県北部に位置する飛騨高山エリアは標高600m前後で、冷涼な気候と日本アルプスから流れ出す豊かな水源に恵まれたホウレンソウの大産地だ。栽培面積にして200ha、生産農家500名を擁している。暑い時期に栽培が難しいホウレンソウだが、飛騨高山産の夏期出荷量は、京阪神・中京市場においてシェア70%を占めトップを誇る。しかし、この全国有数のホウレンソウ産地の担当を清野が引き継いだとき、飛騨高山にタキイのホウレンソウは一株もなかった。

写真1

2006年 シェア奪取の糸口を掴め

清野が岐阜県の営業担当になったのは2006年。「ぎふクリーン農業」の旗印の下、飛騨高山でも農薬の使用量削減をはじめとする環境にやさしい農業が推し進められていた。ホウレンソウの品種選定では農薬散布を減らすために耐病性が重視され、競合メーカーからは次々と最新の病害抵抗性を備えた新品種が投入されていた。しかし、タキイは、当時の最重要病害であった「べと病レース5」に抵抗性を持つ品種開発に遅れをとり、飛騨高山におけるホウレンソウシェアは0へ陥った状況であった。

「なんとしても飛騨高山でシェアを獲りたい」

清野は営業としての闘志を掻き立てられた。この全国的に知名度の高い産地に食い込むことができれば、他の産地への波及効果が期待できる。タキイのホウレンソウをアピールする絶好の舞台だ。

飛騨高山はトマトについても全国屈指の産地であり、タキイの代表品種である『桃太郎トマト』が20年以上にわたり作られ続けている。しかしホウレンソウ農家とはほとんどつながりのない状態であったため、“品種推進”も一筋縄ではいかない。清野は自らも頻繁に足を運んでいたトマト農家から情報収集を行い、ホウレンソウ農家やJAのキーパーソンを地道にたどっていった。

種苗メーカーの営業に特有の仕事である“品種推進”において、産地のキーパーソンを探り出すことは極めて重要だ。実際に作物を栽培する農家はもちろん、JA担当者や出荷先の市場関係者など、その産地の品種決定に影響力を持つ人物に、自身の目でタキイ品種を使うメリットを認めてもらうことが第一歩。キーパーソンに「この品種を使いたい」と言わすことができれば、産地全体が動き出すからだ。

写真2

※べと病:
糸状菌(カビ)の一種であるべと病菌(Peronospora farinose)により、葉にできた灰緑色〜黄色の境界不明瞭な病斑が葉全体に広がり淡黄色となり、葉裏面に灰紫色のカビが生える植物病害。べと病菌は平均気温15℃前後で曇天や雨が続くと発生しやすいため、特にホウレンソウの春および秋まき栽培で被害が大きい。罹病株は、多湿時期にべとついた感じになることから「べと」と呼ばれるようになった。レース(R)とは病原菌の系統のこと。品種育成によりつくられた病害抵抗性品種に罹病(感染)する病原菌ができるたびにレース(R)数は増える。ホウレンソウのべと病は、国内ではR-1、3〜7までが確認されている。

 

2007年 待望の新品種『TSP-413』の誕生

この頃、タキイの研究農場では、近い将来に産地での発病が予見されていた「べと病レース7」に抵抗性をもつホウレンソウ品種、『TSP-413』を誕生させていた。清野は、唯一以前からつながりがあるホウレンソウ農家に交渉し、『TSP-413』が現地で品種特性を発揮するか確認するために畑の一角を借り、試験栽培を開始する。

結果は上々であった。飛騨高山では3月から11月にかけて年間に5作、ホウレンソウ栽培を行う。その間の7〜8月は冷涼地といえども日中は30℃を超す気候だ。元来、ホウレンソウは30℃以上になると生育が停滞するが、『TSP-413』なら出荷時の問題もかなり改善されるはずだ。

「これならいけそうだ」

写真3

『TSP-413』に手応えを感じた清野はすぐさま行動に出る。多方面からの情報収集で掴んだホウレンソウ農家の有力者の元へ急いだ。試験栽培で収穫した『TSP-413』の現物を持ち込み、評価を仰ぐためだ。

「このホウレンソウはいいね」 「これなら使ってみたいな」

キーパーソンと踏んだ人物に使ってみたいと言わしめた『TSP-413』。清野の手応えは、より確かなものとなった。